「新しい釣漁業の技術」山下楠太郎
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第八章最近開発されつつある漁法電源はバッテリーで、これから三五○ボルトの電圧を瞬間的に発生させるわけであります。曳細の純には、ビニールの膜が完全にかぶせてあるので、絶縁されるわけであります。曳細は潜水板を使用し、ゴールデンベイトを使用したものであります。魚がかかると、操作機のボタンを五’十秒間押して電流を通じ、魚を仮死させるわけで、魚はあばれずに短時間で船にひきあげられますので、その鮮度はきわめて上等であり、その時釣れたサワラなどは、サワラ独特の灰色の横ジマがあざやかで、味も極めて良好でありました。漁具全体が高値(一式二五万円)であったり電流の関係に欠点がありましたため成功とまでは行きませんでしたが、なお日の目をみる余地がのこされているものであります。最近、ソ連ではこの方法に似たものが実用化されてきました。これはむしろ電流漁法というべきもので、魚の体は電流をよく伝導する性質があり(導体)、電流の強弱により反応の度も違うわけです。160側電流を利用した漁法各国でいろいろと試験的に行なわれているが、我が国でも神奈川県水産試験場と私のところとで研究したことがあります。「衝撃電流による曳細漁法」がそれである。昭和三十年四月頃であったと思う。試験船江の島丸(四○・六三総トン)は南方諸島の底魚釣漁業試験のために日本を後にし、途中、八丈島および西の島近海において、この漁法の実験を行ないました。衝撃発生機は鉄芯入誘導線輪を直流磁化した後、直流電源を継電器によって切断するとき、鉄芯入誘導線輪の両端に誘起される衝撃電流を利用して、掛『た魚を仮死におちいらせるものであります。電源を一分間に一五○l三○○回断続させ、五’六秒間の電撃を釣針(陽極)にかか『た魚に加えると、魚は仮死状態となり、たやすく船に上げられるわけで、

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