「新しい釣漁業の技術」山下楠太郎
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単視野球のポールのような、球型をしております。そして、水晶体は堅く、すぐ前の方をみるように作られ、遠いところを見る必要のある時は、レンズ全体を、レンズ括約筋と呼ばれる特殊な筋肉で目の中の方へ引き込ませるのであります。魚の目の中のレンズが球状なのは、水の中は光の屈折が多いのでそれと関連性があるわけであります。魚の視界複視弓///端ILレンズの中は水と同様な濃度の液体で充満していますから、光が通過しても屈折が起らないのです。27a、しかしながら、レンズだけを前後に伸縮出来ないのですから、球状のままでは、網膜上に鮮明な映像をうつし出すことが出来ない。魚の目は近眼であると云われている原因がここにあるのです。魚の目は最初に述べたように、左右に一つずつついているのですから、右の目で見たものを反対側の脳の神経に伝え、左の目で見たものを右の脳の神経に伝えています。要するに魚の目は単視眼であり、片一方の目で見たものは正確な距離がつかめず立体感も生じないわけであります。しかし、真直ぐ前方のごく狭い区域だけは、複視眼となり、立体感を生じ距離も正確に掴めるようであります。魚の目の可視能力は、人間の目の五分の一にも足りないということです。魚は片側に注意を引くものがあると、先づ単視眼であるという欠点をおぎなうため、個々の目の筋肉を動かして、目をぐるぐる廻わして、距離の測定可能な複視眼の使える狭い視野に目標物を入れるわけです。

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