「新しい釣漁業の技術」山下楠太郎
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のの型が同大のものでも、錯覚がみとめられることもはっきりしました。魚の住む、海水中の色彩は、その殆んどにわたって太陽光線の微量な暗黒の世界であります。現在の陸地の十三倍の体積を有する海ではありますが、その二三百米より深い所は闇の世界で特殊な深海魚や、不思議な山や谷や溝があり、奇妙な魚類や生物が棲んでいるのです。光線の量も水深千五百米から千七百米になると全く光が存在しなくなり、四千米となると、全く暗黒で四百気圧を越える水圧の世界だが、そうしたところにも、生物が住んでいるのです。幾多の謎と、まだ開発されていない、天から授けられた莫大な海底資源とを秘めて、静かに眠っている深海。宇宙開発が叫ばれ、既に、米ソは月にロケットを到達させた時代でありながら、自分達の住む地球の海底すら、開発されないことは世界水産界の大いに恥としなければならない。私もそれらの資源の開発に、今後の水産業の活路があるものと、かたく信じているのであります。こうした海の表面に28ブリ類、マグロ類、カツオ類など回瀞性の魚類がへ餌に飛びつくとき、その体を一度くねらせてひねる様な動作をしてから餌に飛びつくのは、そうしたためではないかとおもいます。では、魚は色の区別はどうであるかというと、これも色盲などと折紙をつけられてきましたが、最近の研究では、魚も人間と同じように、赤、黄、緑、青、紫といった色を識別するばかりか、われわれの目には見ることが出来ない紫外線なども色として認めることがわかりました。又、魚により、好む色、好まない色があり、これも音波と同様に自分の好きな色に集まったり、恐怖におののいて四散したりすることがわかりました。こうした魚の習性や器官については、漁具、漁法を研究する上に最も大切なことであり、透明なやや光沢のあるもの、有機顔料、塗料等による有機物の使用等が、実験的に研究され、実用化するようになり、漁獲率を向上させる基になっております。魚の目は人間の目と同様に、錯覚を起し、そのも

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