「新しい釣漁業の技術」山下楠太郎
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あります。動きのよい、海泳音、捕食音のような、水中音波を数多く発する漁具は大量の餌の群と同じ役割を魚に対して果たす。(山下式誘導漁法、考案の理)餌付きの良い前項でお話し申しましたように、時、わるい時魚が餌を見分ける際に、型状がおおよそ見え、その動作があたかも「本物のエサ」のように見えさえすれば、遠方より飛んでくるのであります。そして、ためらうことなく、即座に喰い付くのであります。型状が餌そのもののようであっても、動きがにぶいものには近寄って来ず、喰いつくにも鰐曙して、グルグルと餌の周囲を泳ぎ、小刻みに喰い付いたりして、なかなか本喰いをしないのが普通であります。生エサでも死にかかったりして、動きのわるいものには全然餌付きがわるくなります。ここに擬餌の動かし方が問題となってくるのであります。概して、回瀞魚の場合は、餌らしく動きの良いも31敏感であるようであります。例へぱ、タイなどは、甘い味に対しては、人間の八十倍も敏感な反応を見せる。魚は水中で味と臭いを殆んど同時に感知する筈であります。臭いだけで味のない物質(インドール)をもって試験してみても、ちゃんと区別して反応を起すことがたしかめられております。漁具漁法においても、魚の好む味や臭いを有効に生かすべきで、従来から、コマセ、カブシ生き餌などを撒餌として与えたり、特に臭いのつよい、油づけなどが用いられてきました。今後もこの臭いの研究を推し進めるべきで、視覚よりも重要なものであることが漁携上経験的に判っています。育てながら獲る漁業に転換してゆく現在、こうした魚の習性や生活に対する研究が栽培漁業を発展させ、水産資源の枯渇しつつある現情を何とか打開してくれるものとは思います。しかし、釣漁業でとる資源などは、もともと、問題にするほどの量ではない。釣漁業の研究が大いに行なわれてしかるべきで

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