「新しい釣漁業の技術」山下楠太郎
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七度廻って、もう一度まわる」辛抱強さが必要であります。漁具としてたった一つの条件が不備なために仲々漁にありつけない時がありますから、すべての条件や要素をととのえることが大切です。シラスや沖アミ類等の非常に小さいものを捕食する、餌付曳縄中の漁船きのわるい魚群もありますが、この様な魚群には出来るだけ小さい柔らかい餌や撒餌を併用して、釣元の細い漁具を用い行うことが必要であります。この様に生き餌の時も、擬餌の時も、時折、道具を変えることができる様に、大小各色の擬餌やその他の道具を船内に用意することが、思いがけない大漁に接するもとになります。魚の餌往々人間は、魚も人間のように、歯をもの喰い方って、むしゃむしゃと物を食べる様に考え勝ちでありますが、歯でもって、人間の様に食べる魚は割合に少なく、特に回海魚の、背中の青い魚類の場合は一気に呑み込む、吸い込む、といった方が適切であります。タイ類であるとかサメ類、一部の底魚類などを除き、多くの魚は歯がそれ程発達しておりません。それは噛んで食べると云うよりは餌魚の後方より大きく口を開けると同時に下アゴから連結しているエラの部分が左右にひろがり、水と餌魚を一気に吸い込み、水はエラより外部へはき出し、餌魚だけを胃中にのみ込んでいる様であります。36

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