「新しい釣漁業の技術」山下楠太郎
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曳細、延細、一本釣漁法等、どの様な釣漁業に於いても、釣針と餌の部分が自由に動き魚が吸い込みやすくするには、釣針の部分に、水によくなじむ麻糸、ナイロン糸等を使用したり、二本爪の釣針を使わず、一本釣を使用する。しかも深く釣針がかかる様、工夫しなければなりません。後述の山下式の中層曳細漁法の餌のつけ方や、山下式ダイヤ環釣の理論はこうした魚の食性より考へられたものであります。餌の仕掛け方釣り漁に於いては何と云っても餌動かし方?の仕掛け方が生命であります。一例を上げると、廻転する様な餌の付け方をしておりますと、魚は喰いません。魚は彼等の住んでいる海中又は水中で、ごく自然に見られる状態や環境に合った漁具や漁法を用いないと、どうしても釣獲率をあげることはできません。半死半生で廻転しながら泳いでいる不自然な餌には見向きもしないのであります。その様な餌では魚にとって少しもうまそうに見えないようです。同じくるくると廻る擬餌でも急37歯はあってもそれは餌魚が外へ出ない様に防止したり、吸い込む動作を補足したりする程度の役割しか果さないのであります。その代り胃や腸の消化力は大したもので、ほとんど丸呑みにした餌魚を消化液、消化酵素を充分すぎる程放出して簡単に消化してしまいます。タラやアンコウなどはいかもの食いで知られ、自分の口の大きさや、胃の大きさに適した食物ならば手あたり次第、胃につめ込んでいるのが普通であります。アンコウの場合などは海鳥を丸のみにしたり、北米産の湖水にいるある種の鱒の腹からは、ブリキ缶や、タール塗りの細、穀類のかたまりなどが発見されたりしています。その反対に異物が口に入った時は、エラを開いて、水を逆流させ、首を左右に激しくふって口中のものを外に吐き出します。釣針の釣元がよく動かない、魚が吸い込みにくい、構造の漁具だと、せっかく掛った魚を釣り落す事になり、一匹の魚が逃げたために、あたら大群を一きょにうしなう結果になります。

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