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タコベイトの歴史

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「タコベイト」の誕生

釣れる疑似餌の試作

手探り状態でのスタート

1941年(昭和16年)、山下楠太郎は疑似餌の研究・開発のため、神奈川県三浦市三崎町にYAMASHITAの前身となる「山下釣具店」を開業する。

すでに結婚していた楠太郎は、ここでマグロ釣りの仕掛けなどを作りながら生計を立て、独自に疑似餌の開発を進めていくことになる。 ちなみに、当時、楠太郎が作ったマグロ仕掛けは、各地で驚異的な釣果を上げたことから飛ぶように売れたという。
かつて、漁師として一流だった楠太郎の面目躍如である。

そんな楠太郎にとっても、釣れる疑似餌の開発は困難を極めた。 毎日のようにオモチャのような疑似餌を作る楠太郎を狂人扱いした者もいたという。 しかし、楠太郎は自分が立てた仮説に、確固たる信念を持っていた。 「魚は音、光(色)、動きからエサを判断している。 つまり、魚たちが捕食しているエサに大きさや動きが似ていて、さらに柔らかい遊泳音(波動)を発し、小魚のように光り輝く疑似餌こそが、魚たちにとってはエサに見える」のだと。

素材としての「塩化ビニール」の可能性

当時、一般に使われていた疑似餌の素材は、鳥毛や魚皮、水牛の角、貝殻といった天然素材が中心であった。 しかし、それらを疑似餌にするためには、熟練した加工技術と知識が不可欠だったという。

そこで楠太郎は、もっと入手が容易で安定した素材を探し求める。 しかし、当時は物不足の時代で、使える材料としては従来のゴムやスポンジのようなものしかない。 当然、試作しても実際の漁で使えるレベルではなかった。そして、試行錯誤の末にようやく見つけたのが、終戦後に進駐軍の放出物資として出回っていた塩化ビニール製品である。

塩化ビニールは形や色が自由になって、その柔らかさも楠太郎が考える疑似餌の特性にマッチしたものであった。 さっそく試作してみた疑似餌は、海中で泳がせるとわずかな波動を発生させると思われ、実釣でも従来の疑似餌を上回る釣果を上げることができたという。

ところが、使い始めてから2〜3時間ほど経つと、徐々に白濁して硬くなってしまう致命的な欠点があった。 3日ほど陰干しすると再び柔らかさを取り戻すが、今度は1時間ほどで白く硬くなってしまう。 軟質のビニールとはいえ、その素材自体が開発されて間もない頃だったので、ビニールが水分を吸収してしまい、このような現象を起こしてしまうのだった。 これでは、せっかくの波動理論を活かせない。

工学博士との二人三脚

この問題を解決するため、楠太郎は高分子化学の専門家である神奈川県工業試験所の田辺浦郎氏を訪ね、 それまで研究した魚の生態の知識、そして漁師をしていた頃の経験則をもとに力説する。

「疑似餌は本物のエサのように自然に泳がなければなりません。エサとしてとくに一番いいのは、軟体動物であるイカやタコです。 だから、私は軟らかな材料で本物そっくりの動きをするイカやタコを作りたい。そのためには、軟らかでよく動く素材として塩化ビニールを使うのが一番いいように思うのですが、 これは残念なことに水の中に入れると硬くなってしまう。これを何とか防ぎたいのです」

こうした発想に興味を持った田辺博士は協力を約束し、楠太郎の試験場通いが始まったのである。 それからは試行錯誤を繰り返し、塩化ビニールに混ぜる柔軟剤(可塑剤)の種類を厳選し、その配合調整によって吸水性を押さえ、柔軟性を持たせられることがわかってきた。 そして約一年後、ようやく吸水や水温の影響を受けない塩化ビニールの開発に成功するのだった。

釣れる疑似餌=タコベイトの完成!

天然素材を超える釣果を叩き出す

改良した塩化ビニールを使った疑似餌で実際の漁をしてみると、驚異的ともいえるほどに非常に食いつきがいい。 何時間経っても素材が硬くなることはなく、ほかの漁師が一尾も釣れないときでも、楠太郎の船だけはいつも大漁であった。

こうして完成した疑似餌は、天然素材の疑似餌を凌駕する実績を叩き出し、しかも、大量生産がもたらす品質の安定性や低価格化などによって、 漁業界に革命をもたらすエポック的な存在となった。 1948年(昭和23年)、YAMASHITAの創業商品「タコベイト」の誕生である。

しかし、どんな偉大な発明品も最初から完全な道具になっているわけではない。難産の末に誕生したタコベイトにしても同様である。 温度変化や吸水によって変質しないビニールを開発したものの、その形状設計や色付けについては、その後も試行錯誤が続いたのだ。

山下式の疑似餌がなぜ釣れるのか?

疑似餌づくりで、とくに困難だったのは着色であった。色や肌合いを本物のエサそっくりにするのはなかなか難しい。見た目に似ていても、水中での条件を考えるとそうともいえなくなるからだ。

たとえば、イワシの仔(シラス)やイカを水中で見ると、身体は透明の保護色で眼の周囲だけが虹色に見える。また、どちらも身体を反転させた瞬間はキラッ!と輝いて見える。 前述したように、この色と光こそが魚がエサとして認識する重要なカギを握る。そして研究を重ねて開発したカラーのひとつが、「蛍光紫」という保護色を模したものであった。 これが、現在ではルアーなどにも当たり前に使われている「ケイムラ」なのである。

また、タコベイトの目の部分に蓄光性の夜光塗料を塗ることで、照度の低い状況でも一定時間、光を放ってアピールする工夫も凝らした。 さらに、貝殻を加熱して粉状にしたものをビニールに混入してみると、水中で光が当たって乱反射を起こし、魚のウロコにそっくりな効果を出してくれた (現在では、貝殻の代わりに特殊なラメを使用している)。

形状に関してもさまざまな工夫を凝らす。本来、タコの脚は8本、イカは10本だが、タコベイトは20本以上に細かくし、 どのような漁法に使っても活きエサが泳ぐような波動を発するようにしたのだ。

また、タコベイトの形状をよく見てみると、眼と脚の付け根との中間部分が少しくびれているのがわかる。 このくびれに水流が当たることで流れの変化が発生し、それが脚の末端にわずかな波動を起こさせる仕組みとなっている。これも、楠太郎のこだわりの部分である。

このようなさまざまな改良を経て、タコベイトはさらに完成度を高めていくのであった。

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